忘れたい

何度でも鮮明に思い出せる

高校三年生の春


大袈裟だと言われるかもしれないけど今まで生きてきた中で一番ドロドロとした嫌な時間で一番時間が流れるのが遅かった

涙を我慢したから痰が詰まったように喉のあたりが不快で、胸より少し上のあたりがベルトでぎゅうぎゅうに締め付けられているみたいに苦しい


目の前の人は何も知らずに何をぺらぺらと喋っているんだろう。私が大好きな人たちについて根拠も何もないのに悪意だけはこもった言葉を向けられるのが本当に辛くて、早く逃げ出したい。涙を堪えるので精一杯だった

心配に見せかけた自慢話をひたすらに聞かされて適当な相槌を打つことしかできなかった


今までで生きてきてたくさんの楽しいこと、大好きな人、忘れちゃいけない言葉があったはずなのに一番に覚えているのがあの手を握られた時の感覚だということが情けない